ほったらかし投資(長期運用)

株式投資を始めると、誰もが「安く買って高く売りたい」と考えます。シンプルな言葉ですが、実際にやろうとすると難しいのが現実です。なぜなら、安いか高いかは、相場の神のみぞ知るからです。しかし、長期的な株式運用を前提にすれば、結果的に底値では買えなかったとしても利益を得られる可能性があります。
1. 長期投資の前提
大前提として、株式市場は短期的には上下を繰り返しますが、長期的には経済成長や企業活動の拡大に伴い徐々に上昇していく傾向があります。日本の株式市場もバブル崩壊後の低迷期を経て、2020年代に入ってからは大きな回復を見せています。米国市場を例にすれば、100年単位で見れば右肩上がりです。
つまり、安く買って、ほったらせば、「長期的には株価は伸びていく可能性が高い」という視点が出発点になります。
2. 「安く買う」とは何か
安い株とは単純に株価が低い銘柄ではありません。大切なのは「企業が今やっていることや将来やろうとしていることに対して株価が割安かどうか」です。
例えば、A社とB社が同じ利益を出しているのに、A社は株価が高く、B社は低いとします。一般論ですが利益に対する株価の水準を比較する指標として「PER(株価収益率)」があります。PERが低ければ、同じ利益を生む力に対して株価が割安と考えられます。
また、こちらも一般論ですが、「PBR(株価純資産倍率)」や「配当利回り」も割安かどうかを判断する材料です。こうした指標を総合的に見て「今の株価は企業価値に比べて安い」と判断できるときが、投資の好機といえます。
しかし、PERやPBRがどうこういう前に、その企業の方向性はどうなのか、経営者がどういう人で、どのような企業運営をしていくのかなどを有価証券報告書から研究し、自分で判断してみるということが大切です。個人的にはPBRは参考にしていますが、PERを参考にしていません。
3. 「高く売る」とは何か
高く売るとは、株価が天井に達した瞬間を狙うことではありません。長期投資においては、買った株が企業成長により価値を高め、結果として株価も上昇した段階で利益を確定することを指します。
例えば、1000円で買った株が2000円に上がったとします。そのとき「まだ伸びるかもしれない」と思うと売り時を逃してしまうことがあります。そこで大切なのは、一喜一憂しないということです。株価が上昇しているときは、誰にでも迷いが生じます。どうしても売って利益がほしいのであれば、「株価が2倍になったら一部売却する」などの手じまいの基準を決めて機械的な判断をするしかないでしょう。
4. 時間を味方にする「積立投資」
「安く買う」「高く売る」をタイミングで狙うのは難しいため、多くの投資家が利用しているのが積立投資です。
毎月一定額を投資することで、株価が高いときは少なく、安いときは多くの株を買えます。これが有名な「ドルコスト平均法」です。結果として平均取得単価が平準化され、極端に高値掴みするリスクを減らせます。
長期投資で時間を味方につけることにより、株価の一時的な上下に振り回されず、安く買い高く売る確率を高めることができます。
5. 投資信託の重要性
安く買うには「どの株を買うか」の選択が不可欠です。しかし、特定の企業や業種に集中すると、その企業の不祥事や景気後退で大きな損失を抱えるリスクがあります。
そこで有効なのが優良な投資信託を見つける事です。複数の企業、業種、地域、商品などに投資されている投資信託は、運用手数料が高いと言われますが、プロが運用するため個人が個別株を購入するより安定的に運用益を得られる場合があります。
6. 感情に流されない仕組み作り
株価が下がると「もっと下がるかもしれない」と不安になり、逆に上がると「今がチャンス」と飛びつきたくなります。こうした感情の動きが投資の失敗につながりやすいのです。長期投資においては、当座の資金が必要にならない限り買ったら売らない。含み損を抱えても耐える姿勢と判断が必要です。
7. まとめ
株式で「安く買って高く売る」ためには、短期的な値動きに振り回されるのではなく、
- 企業に価値があるかどうかは、自分で判断する。
- 基本、評論家や金融機関の営業マンのいうことを真に受けない。
- 複数の銘柄・産業・国・地域に投資するのであれば、手数料が高くとも投資信託が有効。
- 含み損がいくらあろうとも売らなければ損失は確定しない。
- 短期的な「上がった」「下がった」に一喜一憂しない
- 悪いイベント(〇〇ショック)が起きたときこそ買い時、機動的に投資できる現預金を手元に置いておく
ということが重要に思います。
長期投資は一朝一夕に成果が出るものではありません。しかし、時間をかけて企業の成長に伴う株価の上昇を享受することで「安く買って高く売る」という投資の王道を実現することができます。買ったら売らない。株価が2倍程度になったからと言って一喜一憂しない。含み損を抱えても気にしない。これこそが「ほったらかし投資」王道です。
【免責事項】
この文書は、一個人の投資の考え方について解説したものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。投資には価格変動リスクや信用リスクなど、様々なリスクが伴います。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。本稿の内容に基づいて被ったいかなる損害についても、筆者および掲載者は一切の責任を負いません。